εに誓って

εに誓って (講談社ノベルス)

εに誓って (講談社ノベルス)

「もし、犀川先生が、警察の指揮をとっていたら、どうしますか? 突入ですか? それとも犯人を国外へ逃がしますか?」
「狙撃させます」犀川は即答した。
沓掛は黙って犀川を見た。二秒間瞳が動かなかった。
「どこから?」彼はそのままの表情で聞いた。
「できるだけ近くから」犀川は答えた。
(p. 206から引用)

一番象徴的だと思ったシーン。ただし、そう思えたのは仕掛けに気がついてからなのだが。
この巻のキーワードは「誰が誰を騙しているのか。」
Gシリーズの場合、動機の特殊性*1ばかりが目立つが、今回はトリックの方に重きが置かれているように感じられた。


ちなみに、私は第4章の終わりにたどり着くまで仕掛けに気付かず、第5章の冒頭の独白で「…あっ!」となってしまった。
「著者が読者を騙そうとしている部分に見事に引っかかる」という推理小説の醍醐味を味わわされてしまったわけだ。
これだけ綺麗に騙されて、かつそのことを気持ちよく思えたのは十角館の殺人 (講談社文庫)以来だろう。
そういえば、綾辻行人館シリーズにも、こんな感じのミスリードを誘っている作品があったっけ。

*1:まぁ、Gシリーズに限らず、これは森ミステリィの特徴の一つなのだけれど。